装置製造からの学び/回転式乾燥装置

まさと
まさと

実際の装置製造を通して経験したこと、学んだことを語りたいと思います。※一部フィクションを入れています

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装置製造の要求

ある社内製品において、水没検査後の乾燥工程にハンドガンによるエアーブロー作業が行われていました。この作業を自動化したいという要望を受けて計画を開始

要求仕様

製造担当からあがった要求事項は以下の通り。

  1. 省スペース可搬式(床面300✕300以内)
  2. ワーク種は1つのみ
  3. 防音のため蓋あり
  4. 乾燥時間を調整可能(タイムアップで自動で停止)
  5. 予算は10万円(償却期間考慮)←ムリ

要求事項を満足する方法検討

なにより、要求事項の中での一番のネックは予算の少なさ。この少なさから制御盤を使った制御は早々に諦めフルエアーでの設備構成を考えることに。省スペース可搬式に関してはキャスター式の設備にすることと、制御盤レスのフルエアー設備にすることによって達成が可能。蓋に関してはシリンダと簡単なリンク機構を用いて制作することに。そして、乾燥時間はタイマーバルブを用いて調整することに。

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概要設計

まず大まかな概要設計を行った。

乾燥方式の決定

乾燥方法と言っても様々あるが、主にエアブローによる乾燥方法と加熱による乾燥方法の2種が存在する。

エアブロー乾燥

エアーガンで濡れたワークに向かってエアブローをすると水をきることができます。この動作を単純に装置化することでワークを乾燥させます。

加熱式乾燥

高温に加熱された乾燥炉を作成し、そこを濡れワークを通すことによって乾燥させる方法です。


今回の場合対象ワークがCAC406の青銅材で加熱による乾燥を行うと白い水垢コンが出る事を認識していたことと、単純に予算の問題でエアブロー方式を採用することに。

エアブローの概要設計

エアーガンを用いて人が水切り作業をすることを想像すると、少なくともワークが動くか、エアブローノズルが動くかをしないと水が切れない。そのため、どちらかを動かす何かしらのアクチュエータが必要となる。

動かす方法1:シリンダ

シリンダを用いてワーク又はノズルを左右又は上下に動かすことによって乾燥させます。ロータリシリンダを用いれば回転方向に動かすことができます。それぞれ考慮すると以下のような図の方法が考えられます。

ただし、フルエアー制御だとリミットスイッチと、それに付随するバルブが必要となるため、今回の方針(安価に制御)には合わないため却下した。

動かす方法2:エアモータ

エアモータを用いてワークを回転させ、周りからエアブローをすることによって乾燥させます。ラジアルピストン式のエアモータを用いることで低速域でのトルクが出るのでギアレスでポン付けで使用することができる。

小形エアモーター AM-7B | アネスト岩田 | MISUMI-VONA【ミスミ】 (misumi-ec.com)

シリンダによる揺動とは違い、一方向に回し続けるだけのため制御的にも簡単であり、今回はこちらを採用することにした。

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本設計

とにかく予算がないということで予算ベースで設計をすることに。

ないといけないものをかき集める

今回におけるないといけないものは、空圧機器による制御、エアブロー機器一式である。そのため、はじめに空圧回路設計を行った。空圧回路は以下の通り。

動作概要は以下の通りです。

  1. 起動スイッチを押すとシリンダが作動し蓋が閉まる。
  2. 閉まると同時にリミットスイッチが押されエアモータとエアブローが作動し乾燥が始まる。
  3. 一定時間が経過又は停止スイッチを押すと蓋があき終了。

これに必要な空圧機器は以下の通りになります。

  • スイッチバルブ2個(起動スイッチ)
  • タイマーバルブ1個(タイマーで乾燥停止)
  • シャトルバルブ1個(タイマー停止又は停止スイッチで停止する用)
  • リミットスイッチバルブ個(蓋の閉まり確認)
  • エアオペレートバルブ3個(ブロー用/シリンダ操作用/エアモータ用)
  • スピードコントローラー3個(シリンダ操作スピード調整/エアモータ速度調整)
  • フィルタレギュレータ1個(元圧)
  • エアブローノズル2個(対面エアブロー)

次に必要なものを集める

乾燥ボックス

乾燥装置のボックスを考えることに。機能的にはサビ防止のためステンレスボックスが必須であり、かつ脱水した水が意図した排出口以外から排出されないように無駄な接続による穴がないようにする必要があります。今回ぱっと箱を頼める業者が無かったので、ミスミのステンレス制御ボックスを使うというアクロバティックなことをしました。

【穴加工無料】ステンレス フリーサイズ 制御ボックス パチン錠 RSUSBシリーズ | ミスミ | MISUMI-VONA【ミスミ】 (misumi-ec.com)

架台

架台として鉄鋼フレーム溶接構造物または、アルミフレーム組み上げを検討。今回は水切り装置で鉄鋼フレームだとサビが懸念されるため、アルミフレームを採用

アルミフレーム設計はMiSUMI FRAMESを使用した。ちなみにこのソフト、アルミフレームやブラケットだけでなく、キャスターなどもまとめて発注することができるすぐれものです。最近(2021年3月ごろ)更新されさらに使いやすくなりました。

MISUMI FRAMES(アルミフレーム筐体設計ソフト) | MISUMI-VONA【ミスミ】 (misumi-ec.com)

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組立立上

組み立て立ち上げはこの装置についてはスムーズに行きましたが以下のような問題が発生し、それぞれ対処しました。

回転するワークの重心

回転するワークが芯ずれして保持されていたため、高速回転すると装置が大きく揺れてしまうという問題が発生した。ワークの置き治具の位置を若干ずらすことによって芯ずれを低減し装置の揺れを抑えることに成功した。(設計段階から簡単にジグを交換又はずらすことができるようにしているため、そこまで大きな問題にはならなかった。)

蓋の閉止強さ

起動ボタンを押すと蓋が閉まる仕様であるが、今回はそこまで危険性がないものとして片手押し起動を採用したが、わざと何かを挟んでみたところちょいとやばめなパワーだったため、小型のレギュレータをシリンダ動作用のエアオペレートバルブ前に設置した

ワンタッチ継手内蔵型減圧弁 レギュレータ ゲージ付ユニオン

ワンタッチ継手内蔵型減圧弁 レギュレータ ゲージ付ユニオン | 日本ピスコ | MISUMI-VONA【ミスミ】 (misumi-ec.com)

現場のエアー泥棒

エアー式乾燥機の宿命である過剰な流量による工場圧力の低下により、近くの設備の元圧が低下。このことにより、手前の機密検査装置が誤動作してしまう事象が発生してしまった。タンクなどを用いればなんとかなるかと検討したが、タンクのエアーをあっという間に消費してしまい、あまり意味がなかった。最終的な対処としては根本解決ではないが、供給元のバルブを違うものにすること(別作業場用のバルブから拝借)により解決となった。

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完成

ということで完成。若干タイマーバルブの挙動が不安定(20秒〜25秒)であることを除きほぼ理想通りの設備となった。今回の設備を作るに当たり、社内にある他の乾燥装置の価格を調べたところだいたい50万円〜100万円辺りであったの(約20年前)で、コストパフォーマンス的には上々かなと自負。

ちなみに最終部材費は12万円でできました。若干予算オーバーですがまあオッケーです。エアモータが予算を圧迫しましたね…

画像

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