電磁弁のことについてしっかり学べたところで、電磁弁で制御できるシリンダについて学びます。
シリンダとは
シリンダとは一般的に中心にロッドがあり、空気の力でそのロッドを前進させたり後退させたりすることのできるものです。以下のような用途例で用いられます。
- ワークを平行に移動
- ワークの昇降
- ワークの押出
- ワークのクランプ
- ワークのストッパ
- フタの開閉
各用途について説明を加えます。
ワークを平行に移動
シリンダ先端にテーブルをつけてそのテーブル上にワークをおき移動させることができます。移送することで様々な機構の干渉を防止することができます。
ワークの昇降
シリンダ先端にテーブルをつけてそのテーブル上にワークをおき昇降させることができます。ワークの高さ方向の移動に活用できます。ただし、この場合はエアの入っていない状態でテーブルが重力で移動してしまう可能性がある点に注意しなければなりません。
ワークの押出
シリンダ先端にプッシャを取り付けワークを押し出すことができます。コンベアを流れるNGワークを押し出したり、ワークの移送に用いることができます。干渉などの関係でテーブルによる移動と使い分けることがあります。
ワークのクランプ
シリンダ先端にプッシャを取り付け押し付けることができます。押し付けるときの押し付ける力はシリンダ径に依存します。押し付けることによってワークを固定したり、出入り口を塞ぐ気密試験に活用されます。
ワークのストッパー
シリンダをガイドをかましてワークの進行を止めることができます。パーツフィーダなどの切り出し動作などに活用されます。
フタの開閉
シリンダ先端にリンク機構を設けることでフタの開閉を行うことができます。脱水装置など外部と遮断する必要のあるアプリケーションに活用することができます。
シリンダの推力
シリンダの推力とはシリンダが出力することのできる力のことである。
シリンダは空気の圧力の力によってロッドを動かしているため、シリンダ径と導入圧力の積によって表すことができます。端的に言うと、(経方向に)大きいシリンダで高い圧力で押せば強い力、(経方向に)小さいシリンダで低い圧力で押せば小さい力となります。
シリンダ推力(N)=シリンダ受圧面積(m㎡)×導入圧力(MPa)
例えばΦ16のシリンダに0.6MPaの導入圧力がかかっているとき、推力は一般に以下のようになります。
16^2*1/4*π*0.6≒121N
121Nというとおおよそ12kgのものにかかる重力です。(私はイメージをするためによく体重計を指で押してみます)
大は小を兼ねない?
大きいシリンダを使って出力は下げたいと言うときに圧力を下げれば実現できそうですが、シリンダには安定して動くのに必要な最低動作圧というものがあります。これ以下の圧力でシリンダを使用すると作動がククッっとなり不安定になることがあります。必要な推力が決まっている場合はその推力にあったシリンダを選定し、圧力は微調整用と捉えましょう。
シリンダは押し引きで面積が違うものがおおくあります(シリンダロッド分圧力がかからない)。特に 単純なシリンダ系だけで推力が決まらない引き方向などの計算が必要な場合は、メーカーカタログ等をしっかり参照しましょう。
シリンダの動作スピード
シリンダの動くスピードはシリンダに流入する空気のスピードとシリンダから排出する空気のスピードによって決まります。基本的に電磁弁とシリンダのみを取り付けた場合は電磁弁を通過できる流量に依存します。流路の大きい電磁弁を使えば使うほど早いスピードで動かすことができます。
そうであれば、低速で動かしたいときは小さい電磁弁にかえるのかというと、そんなめんどくさいことをする必要はありません。スピードコントローラという補助バルブを取り付けます。
スピードコントローラ
スピードコントローラ(スピコン)とはある方向からの空気はそのまま通過させ、もう片方からの空気の流量を任意に変更することができる補助バルブです。下記のような記号で表されます。記号から紐解くと逆止弁とニードル弁を組み合わせたものであることがわかります。
このスピードコントローラを用いたシリンダのスピード調整方法には2つの方法があります。
メーターイン制御
シリンダに空気を入れる方向の流速を制御することでシリンダのスピードを調整します。下記図のように排出する方向はそのまま排気されます。
メリット
押す方向の流速を絞っているので、排気される側の圧力状況によらずスピード調整をすることができる。
デメリット
押す方向の流速を絞り 排気する方向は大気開放するため、片側のみに圧力がかかり低速動作時に押しスピードが不安定になる。
メーターアウト制御
シリンダから排出する方向の流速を制御することでシリンダのスピードを調整します。下記図のように押し方向の空気はそのままシリンダに流入します。
メリット
排気方向の流速を絞っているので、シリンダピストンの両面にしっかり圧力がかかり、低速時でもスピードが安定する。
デメリット
排気方向のみ流速を制御しているため、排気側に圧力がかかっていない場合シリンダが最高速で飛び出すことがある。(電気的制御で自動運転する前に排気側ポートに圧力を加えておくことで防止することは可能)
どっちがいい?
断然メーターアウトです。なによりスピードの安定性が必要な場面が多いので安定性重視です。前述の通りデメリットである排気側ポートに圧力がかかっていない場合の飛び出し問題については、電気的制御でカバーができるのでそこまでおおきな問題にはなりません。
ちなみに両方のデメリットを抑えるためにメーターインメーターアウト両方をつけるときもあります
スピードコントローラの種類と取り付け方
大きく分けて2つのタイプがあります。それぞれメリットデメリットあるので使い分けをします。
- ワンタッチチューブ-ワンタッチチューブ
- ワンタッチチューブ-ねじ込み継手
ワンタッチチューブ-ワンタッチチューブ
写真のような両側がワンタッチチューブで構成されているスピードコントローラです。一般的に電磁弁とシリンダの間のエアチューブ間に設置します。基本的に製品側にどちらからが制御流になるか明記されています。
上記のような表記の場合は→方向が制御となります。逆止弁の方向で判断ができます。
メリット
- 追加配管時にエアチューブ途中にかませるだけで良いので楽
- メーターインメーターアウト制御を簡単に変更することができる
- 取り付け箇所が自由なため、シリンダ周り電磁弁周りが狭いときに回避することができる
ワンタッチチューブ-ねじ込み継手
写真のような片側がワンタッチチューブもう片方がねじ込み継手で構成されているスピードコントローラです。一般的に電磁弁とシリンダの間のどちらかのポートに設置します。メーターインタイプ(ワンタッチ→ねじ込み継手を制御)とメーターアウトタイプ(ねじ込み継手→ワンタッチ継手を制御)の2種類が存在します。
メリット
- シリンダに取り付けることでどのシリンダのスピードをコントロールしているか明確
- 固定されているものに直接取り付けることができるため、余分なブラケットが必要ない
スピードコントローラの実際の取り付け
実際例を用いて目的の取り付けと速度調整をしてみます。
メーターアウトタイプのスピードコントローラ2つとシリンダと電磁弁を用意し、メーターアウト制御になるようにシリンダにスピコンを取り付けます。
例えばシリンダの押し方向のスピードを調整したい場合はその逆のポートのスピコンを絞ります。押す空気を絞っているのではなく、あくまで排気を絞っている意識をすればわかりますね!
ちなみに電磁弁自体にスピコンがついている省スペースタイプもあります。大量のシリンダを制御する場合はこちらを使ってもいいかもしれません
シリンダの用途とスピコンによるスピードの調整方法を学びました。次は世の中に市販されているシリンダの種類と簡単な使い分けについて書いてみます。
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